自宅の屋根や外壁塗装を行う際、たくさんある塗料の中からどの塗料を選べば良いかお悩みの人も多いのではないでしょうか。さまざまな種類がある塗料ですが、その中でも太陽光を反射させ室内の温度上昇を防いでくれる遮熱塗料は注目を集めています。
そこで今回は、遮熱塗料の特長や得られる効果、メリット・デメリット、施工にかかる費用まで詳しく解説していきます。
遮熱塗料の特長とは
遮熱塗料とは、太陽の光を反射させてくれる働きがあるため、室内の温度上昇を抑制してくれる効果が見込めます。そのため、室内の温度を快適に保つことができるのが特長です。
住宅の屋根材や外壁材に使用することで、夏の暑い時期でも室内の温度を快適に保てるため、近年人気となっている塗料の1つとなっています。
遮熱塗料と断熱塗料の違い
遮熱塗料とよく似た塗料の1つに断熱塗料と言われるものがあります。断熱塗料は遮熱塗料と同様に室内の温度上昇を抑える効果があるとされていますが、大きな違いとしては保温性があるかどうかということです。
遮熱塗料を塗装した屋根材や外壁材は、太陽の光を弾き室内に熱を伝わらせないことで室温を快適に保ってくれますが、実際に保温機能は備わっていません。
しかしながら、断熱塗料の場合は太陽の光を弾く効果はないものの、熱や冷気の侵入を防ぎ、室内の温度上昇を抑える保温機能が備わっています。このように2つの塗料には大きな違いがあるのです。
遮熱塗料の種類
遮熱塗料は遮熱メカニズムの違いから2種類に分けられます。
1つ目は太陽熱高反射率塗料です。塗料の中に含まれる特殊な顔料が、太陽光に含まれる近赤外線領域の光を反射してくれる作用があります。
2つ目は熱遮蔽塗料です。塗料の中に中空ビーズを混入し、塗膜に空気層を設置することで熱を伝わりにくくしたものを中塗り用として使用します。その上に上塗りとして高反射率塗料を塗装するのが熱遮蔽塗料です。
遮熱塗料は用途別に、屋根用、外壁用、ベランダ用、通路、土間などに分けられます。屋根用には、水性のウレタン、アクリルシリコン、フッ素などの樹脂塗料があります。外壁用には、水性のアクリルシリコン、フッ素などの樹脂塗料が最適です。
ベランダ用には、水性のウレタンがおすすめで、通路や土間には、水性のアクリルシリコン樹脂塗料が適しています。
遮熱塗料のメリット5点
遮熱塗料にはさまざまなメリットが存在します。ここからは遮熱塗料のメリットを5つに分けて紹介していきます。
遮熱効果により室内温度が快適に保たれる
屋根材や外壁材に遮熱塗料を塗装すると、太陽光を反射させてくれるため屋根材や外壁材に熱がこもりにくくなり、室内の温度上昇を抑え室温を快適に保ってくれます。
太陽光を反射してくれるので、昨今の猛暑日が多い夏場でも室内への影響が少なく、暑い夏でも快適に過ごせることでしょう。
電気代が節約できるため節電効果に繋がる
遮熱塗料の効果で熱い夏場でも室内の温度上昇が抑えられるため、冷房を使用することが減り電気代の削減に繋がります。一般的に室内の温度が1度下がると、およそ10%の電気代が削減できると言われています。夏場に冷房の温度を下げて使用することなく、省エネ効果も期待できるでしょう。
さらにCO2削減など、令和の時代においても環境問題は深刻化しており、このような節電効果は自宅で可能なSDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みともいえます。
熱による劣化を防げる
遮熱塗料を屋根材や外壁材に塗装することで、太陽光を反射させるだけでなく、熱による劣化を防ぐ効果も期待できます。住宅の中でも特に太陽光の熱の影響を直接受けやすい屋根材や外壁材は、他の箇所より劣化が進みやすいものです。
そのような場所に遮熱塗料を塗装すれば、太陽の強い光を反射して屋根材や外壁材の表面温度の上昇を抑えてくれます。熱による建材へのダメージを軽減することができるでしょう。
塗膜の寿命が長いため耐用年数が延びコスパも良い
遮熱塗料の平均的な耐用年数は、15~20年といわれています。塗料の中で一番人気であるシリコン塗料より約2倍の費用が掛かるため初期費用は割高です。しかし、耐用年数を延ばすことのできる遮熱塗料なら、メンテナンスも少なく済むため長期的にみるとコストパフォーマンスの良い塗料といえます。
補助金(助成金)を受け取れる場合がある
遮熱塗料を塗装することで、冷房の使用を節約でき省エネ効果が期待できるということで、自治体によっては助成金を給付しているところもあります。助成金を受けることが出来れば、20~30万円ほどの節約になる可能性もありますから、遮熱塗料での塗装工事を検討している場合は、お住まいの自治体の助成金制度を調べておきましょう。
ちなみに補助金は申請してももらえない場合もありますが、助成金は申請すれば受け取り可能です。
遮熱塗料のデメリット5点
ここまでは遮熱塗料のメリットを5つに分けてご紹介してきましたが、一方でデメリットも存在します。ここからは遮熱塗料のデメリットを5つに分けて紹介していきます。
価格が高い
遮熱塗料は特殊塗料に分類されるため、人気塗料であるシリコン塗料に比べて塗装費用が高くなることが多いです。シリコン塗料より約2倍の費用が掛かってしまいますが、シリコン塗料よりも耐久性が高く耐用年数が長いので、メンテナンスなど長期的にみると遮熱塗料の方が経済的である場合もあります。
数年後に住宅を手放す可能性のある人は、もっと安い塗料をしようしたほうがおすすめともいえます。
遮熱塗料には保温効果がない
遮熱塗料には冬場の寒さを補ってくれる保温効果はありません。遮熱塗料の効果としては、太陽光の熱を反射することで室内に伝えにくくしてくれる働きはありますが、室内に溜まった熱を外に排出することはできません。
遮熱塗料は暑い夏場にはピッタリの塗料ですが、冬場には適さないため、寒い地域にお住まいの人には注意が必要です。
表面が汚れると遮熱効果が低下してしまう
遮熱塗料の働きを発揮しやすくするには、屋根材や外壁材の塗膜表面をきれいにしておくことが大事です。遮熱塗料を塗装した屋根材や外壁材の表面が汚れていると、太陽の光を反射しにくくなるため、遮熱の効果が低くなってしまいます。
そのような不具合を防ぐためには、定期的に塗膜部分の洗浄を行うことで、遮熱効果を維持できます。
遮熱塗料は耐久性が高いわけではない
遮熱塗料を塗装した表面の塗膜の耐久性ですが、シリコン塗料と比べても大差はありません。遮熱塗料は太陽の光を反射させることのできる塗料ですが、無機塗料のように耐久性が高い塗料というわけではありません。価格の高い遮熱塗料ですから耐久性も高いと勘違いしてしまう人もいるかもしれませんので、注意するようにしてください。
断熱効果はない
遮熱塗料は先述した通り、太陽の光を反射させることで屋根材や外壁材の表面温度を上昇させない効果がありますが、断熱材や断熱塗料のような効果はありません。あくまでも外からの熱を室内に伝えないようにする働きはありますが、室内の熱を外に逃がさないといった効果は期待できません。
遮熱塗料はこのような人におすすめ
ここまで遮熱塗料の特徴から、メリット、デメリットをご紹介してきました。ここからは具体的にどのような人におすすめなのかを、それぞれの住宅に関する悩みや建物の形状別に紹介していきます。
外壁や屋根に金属系を使用している
金属系の屋根材や外壁材は熱伝導率が非常に高いため、太陽の光による熱が屋根材や外壁材に浸透しやすくなります。そのため住宅に直接的に熱を伝えてしまいます。
遮熱塗料を金属系の屋根材や外壁材に塗装することで、強い太陽の光を反射させることができるため、夏場の省エネ効果が期待できますし、屋根材や外壁材の劣化を防げます。
2~3階建てで2階以上に居間がある
建物は高い位置にあるほど熱の影響を受けやすく、室温が上がりやすいものです。ですので、2階以上に居間があるお宅の場合は、屋根材や外壁材に遮熱塗料を塗装して室内の温度上昇を防ぐ必要があります。
小さい子どもの部屋などは簡単に冷房を付けることもできません。適度に温度上昇を防げるのは安心感もあります。
夏の暑さを軽減し光熱費をおさえたい
遮熱塗料を塗装すると夏場における室内温度上昇を抑える効果が期待できるため、夏場の暑さを軽減させたい人や、夏場の光熱費を節約したい人におすすめです。夏場のエアコンによる光熱費を大幅に削減できれば家計にも優しいうえに、省エネ対策にも繋がり一石二鳥といえるでしょう。
代表的な遮熱塗料3点をご紹介
遮熱塗料は製造販売する企業によってさまざまな特徴があります。ここからはよく使用されている代表的な遮熱塗料を3点ご紹介していきますので、これから遮熱塗料をご自宅に塗装しようと考えている人は参考にしてみてください。
日本ペイント・サーモアイシリーズ
『日本ペイント・サーモアイシリーズ』は、日本ペイントが製造販売している遮熱塗料です。日射反射率が90%と高いサーモアイシリーズは、カラーバリエーションも豊富なため幅広い人に人気となっています。また日本ペイント独自の技術により遮熱性を長持ちさせてくれるうえ、艶のある仕上がりを実現してくれます。
日進産業・ガイナ
『日新産業・ガイナ』は、遮熱機能に加え防音性能も兼ねそろえた塗料となっています。
この塗料は一般的な住宅以外にも、工場などの大きな建造物にも幅広く使用されており、遮熱塗料の中では費用が高い傾向にある製品です。
関西ペイント・アレスクールシリーズ
『関西ペイント・アレスクールシリーズ』は、日照反射率が80%と高く耐用年数も長いことが特徴の1つといえます。塗装した屋根材や外壁材の温度上昇を効率よく抑えてくれる製品と好評です。
遮熱塗料にかかる費用
ご自宅の屋根材を遮熱塗料で塗装する費用の相場ですが、一般的な広さである30坪の住宅で、35~60万円ほどとなっています。これは平均的な価格であり、使用する遮熱塗料の種類によって違いがあります。
まとめ
今回は遮熱塗料の特徴からメリット、デメリットまで知っているようで知らなかった遮熱塗料について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
遮熱塗料にはたくさんの種類があるうえに、それぞれ特徴や機能が違いますので、素人では選ぶのが難しいものです。
これからご自宅を遮熱塗料で塗装しようと考えている人は、ぜひこの記事を参考にし、信頼できる業者さんとよく相談しながら、慎重に検討していただけたらと幸いです。