住宅の屋根でリフォームを検討している人の中には、現状の屋根とは異なる形状に変更したいと考えていることはないでしょうか。リフォームは費用もかかりますし、失敗はしたくないものです。屋根のデザインを丸ごと変更する場合、まず可能なのかどうか、そして費用はいくらかかるのか、という点で不安になるものでしょう。
そこで、屋根の形状を変更したい人へ向けて、屋根の種類や費用などを解説していきます。
リフォームで屋根の形状は変更可能か?
まず、屋根のリフォームは基本的に変更可能です。結論から入りましたが、極論では費用を払えば十分可能といえます。屋根は最初に目に入るものであり、住宅を購入したとしても、後から建てられた他の住宅を見て、デザインに惹かれることは珍しいものではありません。
さらに実際に住んでみて、既存の屋根に不満を抱くこともあり得ます。特に中古で購入した住宅は、屋根のデザインを変更してみたいと考える人もいるものです。
もちろん、費用や工事期間などもありますが、基本的にリフォームで屋根の形状は変更可能といえます。
リフォームで屋根の形状変更時における注意点
リフォームで屋根の形所を変更したい場合、いくつか注意点があるので紹介していきます。
確認申請が必要な場合もある
屋根の形状を変更する場合、高さによっては確認申請を提出する必要があります。屋根の最高部はどこまでも延ばしていいものではなく、リフォームによって敷地の斜線規制を超える場合には確認申請が必要です。
この確認申請は通常のリフォームでは不要となっていますが、図面の準備などで数か月ほどかかる場合があります。また、書類以外にも申請代行費用が25万円~30万円と高額なので、本当に理想とする屋根の形状変更が必要なのかしっかりと調査しなければなりません。
法律の問題もありますし、素人では分かりづらい面がかなりあるので、希望する屋根の形状変更に確認申請が必要かどうか、リフォーム会社にしっかりと相談するようにしましょう。
追加費用が発生する恐れがある
屋根というのは紫外線や風雨の影響を一番受けやすい部分です。強風時には思わぬ飛来物が直撃するケースまであります。これらの影響を受けるので、屋根というのはさまざまな要因で劣化しやすいものといえます。
そこで、屋根の工事に入ると、これまで分からなかった下地に大きな損傷や劣化が発見される場合があります。下地が劣化すると雨漏りの原因に直結しますので、補修が大切になります。下地を補修せずにリフォームする業者はありませんので、この修繕費用が結構かかってしまいます。
劣化が進んでしまっている状態では、予定外の出費もかさんでしまうでしょう。
内容によっては一時的に退去の可能性もある
屋根のリフォームでは工事中でも問題なく普通に生活することが可能です。ただし、下地の補修や大がかりな工事になると、工事内容によっては一時的に退去しなければなりません。
そうなると仮住まいが必要となります。数日程度なら親戚や実家、ホテルも可能でしょうが、数週間から数か月ともなると、ウィークリーやマンスリーなどの物件を探す必要がありますし、契約や審査を事前に済ませておかなくてはなりません。
リフォーム中に住まいを探すのはかなり大変ですので、事前のリサーチをしっかりしておきましょう。また、それに伴う追加費用も必要ですので、十分考慮しなければなりません。
リフォームする際に参考となる屋根の形状
リフォームする際に参考となる屋根の形状をみていきましょう。
切妻(きりづま)屋根
二つ折りで日本でも割とよく見かけるデザインが特徴です。外観もきれいなので人気の屋根といえます。雨水の排水性が高く、屋根の傾斜が雨水をためずに流れてくれます。スタンダードな屋根ですので、個性的なデザインという点では見劣りするのが難点といえるでしょう。
片流れ屋根
一見するとオシャレな外観で、平面が片側に傾斜をつけているタイプの屋根です。切妻屋根の合間にあれば、かなり目立っている個性的なデザインともいえます。意外にシンプルな構造ですので、リフォームでも工期を抑えられます。
雨水の排水性を保つために、ある程度勾配を付けなければなりませんが、屋根裏のスペースが活用しづらいデメリットもあります。さらに風通しが悪いので湿気がこもりやすいのも難点です。
陸(りく・ろく)屋根
平面で陸地のようなイメージから名前が付いており、シンプルなデザインの屋根です。勾配がないので大きなスペースを使えますから、屋上を利用できるのがメリットです。屋根裏がないぶんだけ屋上のスペースにはガーデニングはもちろん、子どもの遊ぶスペースにも活躍できます。
バーベキューを楽しむことも可能ですので、幅広く遊びや布団など大きな洗濯物を干すにも活用できるでしょう。また平面の屋根になるので積雪しても落雪することはほとんどありません。
ただし、平面な分だけ勾配がないことから水はけはよくないのがデメリットです。屋根に水が溜り続けるので雨漏りや劣化が心配されます。
寄棟(よせむね)屋根
大棟という頂点から4枚の屋根が勾配を作ってあり、安定感もあって人気の高い屋根といえます。日本以外でも広く使われており、雨の排水や日差しにも強いのでメリットが多くあります。
メンテンスは4枚分必要となりますが、その分だけ耐風性もあるので風にも強い屋根といえます。落ち着いた雰囲気を演出しますが、屋根裏のスペースが少し狭く感じますし、太陽光パネルが設置しづらいデメリットもあります、
入母屋(いりもや)屋根
入母屋屋根は切妻式と寄棟式のいいところを合わせた和風モダンな屋根です。デザイン性に優れており、日本古来の良さをふんだんににじみ出ているので、瓦葺きと組み合わせるのがおすすめです。
日本独特の湿気が多い地域でも通気性や耐風性に優れているので活躍できます。重量感があるので、入母屋屋根は高級感を演出しています。イメージ的には寄棟屋根の上に切妻屋根を乗せた感じです。両者の良さを併せ持った屋根といえますが、あまり新築物件では見られない屋根となっています。
方形(ほうぎょう)屋根
屋根の頂点に棟がないので、三角形やピラミッドのようなイメージの形をしています。その分だけ水はけもいいので排水性に優れています。一般住宅よりも社寺で使われているデザインですが、注意するのが耐久力と耐震性です
屋根が三角形になっているので、どうしても衝撃には弱いのが難点であり、太陽光パネルの設置も難しいでしょう。
招き屋根
2つ折りの半分だけ長い屋根を指しています。切妻屋根と片流れ屋根を合わせた感じで、片方が長くなります。個性的なデザインで近年もよく見かけます。耐風性や耐久性も高めなので、デザイン性と安全面でリフォームを考えている人のもおすすめです。
二つの屋根が重なる面は短い方が壁になるので、この隙間に雨水が入りやすく雨漏りのデメリットも考えられます。
はかま腰屋根
名前に特徴がある屋根といえます。切妻屋根の妻側に寄棟屋根のような屋根を付けており、はかまを履いているようなので、はかま腰屋根といわれています。
切妻屋根の両端をカットしたようなイメージです。半切妻やドイツ屋根といった呼ばれ方もされています。
道路斜線制限に対策できるメリットがあり、オシャレなデザインが人気です。ただ、ちょっと複雑な形状ともなっており、一般的な切妻屋根よりも雨漏りしやすくなるデメリットがあります。
バタフライ屋根
屋根は基本的にV字型が多いものですが、両端から中央へ向かって低くなるV字型の形状になっているのをバタフライ屋根といいます。
個性的なデザインの屋根となっていますが、水はけが悪いと真ん中の谷部に水が溜まりやすくなって屋根材の劣化を招いてしまうので注意が必要です。
屋根の形状変更にかかるリフォーム費用
屋根の形状変更にかかるリフォーム費用は数百万円ほどしますので、おおよそ300~700万円と多少幅があります。
屋根の形状が分かればある程度絞り込めるのでみていきましょう。
・陸屋根に変更 約200万円〜450万円
・切妻屋根に変更 約400万円〜500万円
・寄棟屋根に変更 約500万円〜600万円
・片流れ屋根に変更 約300万円〜500万円
こちらは一例ですが、やはりリフォーム費用は少なくても300万円以上はかかってしまいます。すでに新車が購入できる金額となっています。さらに、リフォーム時に確認申請が必要となるなら、さらに費用は高額になってしまいがちです。
形状変更よりも勾配だけを調整することも可能ですが、こちらも200万円から費用がかかってしまいますので、どちらにしても安いものではありません。
屋根の形状変更では足場を設置しますが、リフォームのついでに外壁の塗装も依頼する場合はさらにコストがかかります。ただ、足場代など別で注文するよりかはコストを抑えられる場合があります。
屋根の形状変更は慎重に判断
屋根の形状変更は確かに見た目がガラッと変わるので、リフォームしがいがあります。これまで慣れ親しんだ我が家が新しくなったイメージになるので、住む楽しさが増えていくでしょう。
しかし、和風の建物に洋風なデザインの屋根を設置しても違和感が残りますし、外壁や周囲の景観と合わせてマッチするデザインが理想的です。
屋根は定期的なメンテナンスも必要です。屋根材を長持ちさせるには塗装が重要ですが、複雑な形状の屋根になると、メンテナンス費用も増えてしまいますので、長期的なコストを計算しておくべきです。
それだけに屋根の形状変更は慎重に判断する必要があります。
屋根形状は必ずしも自分好みにできるわけではない
先述したように屋根の種類はさまざまですし、カラーも含めればたくさんのデザインから選ぶことができます。しかし、屋根の形状変更は費用を出せばどんなものでもリフォームできるという訳ではありません。
屋根は建築基準法によって制限があり、隣地や道路への影響も懸念されます。それぞれの制限をみていきましょう。
・道路斜線制限
道路への採光や風通りなどを制限しており、屋根に関しても一定の高さを制限しています。
・絶対高さ制限
一般的に住宅は10mから12mまでの制限があります。これは敷地面積や容積率に左右されません。
・隣地斜線制限
隣地・隣人の日当たりや風通しを保つために勾配や高さを制限しています。
・北側斜線制限
北側の隣地・隣人への日照を考慮した勾配や高さの制限が入ります。
これらの制限は法律で定められているので、お金に余裕があったとしても、自由に変更できるわけではないのを覚えておきましょう。
形状変更は優良な業者に相談
屋根の形状変更は高額な費用と工期も長くかかる場合があるので、慎重に進めないといけません。工事内容によって一時的に家を出なければならない場合は、さらに費用もかかりますし、住まいを探すこともする必要があります。
個人でやるにはなかなか大変なので、リフォーム全般を任せられる優良業者が頼りになります。口コミはもちろん、担当者が親身になって話を聞いてくれる業者は信頼できますし、すぐに契約を迫る業者は怪しいものです。必ず相見積を取って比較するようにしましょう。
近所への説明は業者任せにしない
屋根のリフォームは足場を組んで大掛かりな工事となります。騒音や粉じんなど、周囲への説明は事前に施工業者や解体業者が行うものです。
しかし、施工業者への依頼は家主になります。特に今後も近隣住民とは付き合いが長くなりますので、あいさつは業者任せにしないで一緒に回るようにしましょう。
「業者が説明するから別にいいか…」という姿勢はトラブルに発展することもあります。だれでも日中で隣が工事するのは良い気がしません。隣人が夜勤などで日中寝ていることもありますし、「あいさつに来ないから礼儀がない」と近隣住民から印象が悪くなると住みづらくなってしまいます。
特に隣人の場合、日照や境界線などでトラブルになるケースもありますので、しっかりとあいさつを済ませておくのが無難です。
まとめ
屋根の形状変更をリフォームについて解説してきました。屋根のデザインを新しくするのは外観が一気に変わるのでリフォームしがいがあります。ここで説明したように屋根の種類も豊富ですので、自分好みの屋根が見つかるものです。
ただ、屋根の形状変更はリフォーム費用が高額となります。簡単に手が出せるものではありませんし、車一台を買えるほどの金額です。
慎重に判断しながら優良業者に相談するようにしましょう。