住宅の屋根材で人気のガルバリウム鋼板ですが、こちらには横葺きと縦葺きに分かれています。どちらもメリットとデメリットがあるもので、リフォーム時に検討する際には非常に悩ましいものです。
ただ、オシャレなデザインといえばやはり横葺きを採用するべきでしょう。そこで横葺きの特徴やメリット・デメリット、縦葺きとの違いなどを解説していきます。
横葺きとは
横葺きとは鋼板を軒先から横に重ねて葺いていく工法です。横葺きにはつなぎ目の段差が立体感を演出する「段葺き」と、つなぎ目がフラットな「平葺き」があります。
地面と平行に屋根を葺いていくので、ボーダーになります。また、縦葺きと違ってデザイン力に優れており、外観からこだわりたいという人にとってもおすすめです。
また、横葺きと縦葺きはそれぞれメリットも異なり、リフォームを検討する上ではその違いをしっかり把握しておくことは重要です。
横葺きのメリット
横葺きのメリットをみていきましょう。
デザインやカラーが豊富
金属屋根といえば重厚なイメージが付き物ですが、横葺きはデザインやカラーが豊富でさまざまな形状の屋根にも使用可能です。デザインのバリエーションを選べるので組み合わせも自由であり、スタイリッシュでモダンな外観に仕上げられます。
屋根の外観にこだわりを持ち、オシャレな屋根を演出したい場合には横葺きがおすすめです。
縦葺きよりも防音性が高い
縦葺きは屋根材が大きいので音を伝えやすくなりますが、横葺きは屋根材が縦葺きよりも大きくないので防音性に優れています。これは横葺きが屋根材を組み合わせて葺いているためでもあります。
横葺きのデメリット
一見メリットがありそうな横葺きですが、横葺きにはデメリットもありますので、それぞれみていきましょう。
雨水が流れにくい
一番の懸念要因として挙げられるのが雨水の流れにくさです。屋根材を重ねていくので雨水が流れづらくなってしまいます。排水性が悪いので雨漏りのリスクが高まります。
また、勾配3寸以上の屋根でないとスムーズに排水しない懸念があります。緩い勾配の屋根には使用できませんので注意しましょう。
雨水がしみ込んでしまうと結露がたまり湿気がこもってしまいます。屋根や住宅全体の劣化につながる恐れがあるでしょう。
工期が長引きコストがかかる
横葺きは縦葺きよりも工期が長くかかる傾向になります。住宅の規模にもよりますが、全体的に横葺きのほうがコストもかかり気味です。横葺きは勾配が付いていない屋根の場合は使用できませんが、勾配をつける工事を入れると設置可能です。もちろん、その分だけ工期とコストがかかってしまいます。
縦葺きの特徴
横葺きはボーダーになっていますが、一方で縦葺きの場合はストライプといえ、一枚の鋼板を棟から軒先まで葺いて使用します。縦葺きは主に「瓦棒葺き」と「立平葺き」の2種類に分かれています。
瓦棒葺きは結合部に芯木を使って金属板を取り付けていきます。芯木を打ち付けるので、ここから雨漏りが発生するリスクも抱えています。主にトタンを使用しているのでトタン屋根ともいわれています。
一方で芯木を使用しないのが立平葺きです。これは金属板を折り曲げて屋根材を接合する工法になり、「縦ハゼ葺き」と「嵌合式」の2通りに分かれています。
縦ハゼ葺きは締結部の板金を折り込んでいき、手ガチャと言われる工具を用いて締結していきます。水密性が高いのですが、その分施工に手間がかかります。一方勘合式は締結部をはめ込んでいきますので、縦ハゼ葺きよりも容易にできるのが特徴です。
縦葺きのメリット
・「雨漏れしづらい」
・「緩やかな勾配で使用可能」
・「横葺きよりも低コスト」
縦葺きのメリットは雨漏れが起こりにくい点です。屋根材と同じ向きに雨水が流れていくので緩やかな勾配でも使用できます。横葺きだと使用できない勾配でも問題ありません。
また、施工に時間がかからず、短工期でコスト全体を抑えられるのもメリットといえるでしょう。
縦葺きのデメリット
縦葺きにもデメリットがあります。それはデザイン性が乏しく、個性を発揮しづらい点です。どうしても複雑な形には適していませんので、デザインやカラーの面で横葺きよりも劣ってしまうでしょう。
特に外観にこだわりがなければ縦葺きでも問題ありませんが、リフォームは一生のうちにそう何度もある訳ではありません。横葺きのデザインに興味を持っている人の場合、縦葺きの屋根から横葺きに変更することも可能です。
横葺きに適した素材は断熱材ガルバリウム鋼板
横葺きに最適な素材といえば、断熱材一体となっているガルバリウム鋼板です。一般に金属の屋根材は雨音を反響しやすいので、雨音がうるさくて日常生活に支障をきたすという問題があります。断熱材には遮熱だけでなく遮音効果もあるので、雨音を抑える効果が期待できます。
また、金属板だと夏は熱を伝えて室温が上がりやすくなり、冷房が効きづらくなってしまい光熱費もかさんでしまいがちです。断熱材を取り込んだガルバリウム鋼板の場合、室温の上昇を抑えるだけでなく、冬も快適に過ごすことが可能です。
一方でトタンを使いたいという人もいるでしょう。確かにトタンは屋根材として主流でしたし、価格も安いのでコスト面で使用を検討することもあり得ます。しかし、トタンは耐久面でガルバリウム鋼板よりも格段に落ちてしまいます。錆に強い面もありますが、傷が入れば錆びやすいので、結果的に長期的なコスパをみればガルバリウム鋼板のほうが優れています。
横葺きの屋根でリフォームする際の注意点
屋根は劣化しやすいので住宅のリフォームを検討する人も多いものです。そこで横葺きの屋根でリフォームする際の注意点をみていきましょう。
屋根の勾配を確認
縦葺きの場合はそれほど気になりませんが、横葺きの屋根だと最低2寸は必要で、雨漏りのリスクを考えればより勾配が付いたほうが無難です。既存の屋根の勾配を確認しておきましょう。
勾配が緩い屋根に対してガルバリウム鋼板を使用すると、雨水の流れが悪くなって雨漏りが発生してしまいます。さらに、そこから腐食が始まるので住宅の劣化につながります。
自宅の屋根がどの程度の勾配か分からない場合、施工業者に相談してみるようにしましょう。
特に縦葺きからデザインを重視したいからといって安易に横葺きにリフォームする場合は注意が必要です。出来上がりの外観が素晴らしくても雨水が流れづらい屋根になってしまえば修繕に余計なコストが発生してしまいます。
相見積もりで信頼できる業者を探す
先述した勾配の件ですが、リフォームを担当する施工業者によっては知識も乏しく怪しい業者もあるかもしれません。雨漏りは生活環境も悪化させてしまいますので、しっかりとした業者を探す必要があります。
そのためにもあまりに安い見積もりも安心できません。もちろん、必要以上にコストをかけてくる業者も危険です。複数の施工業者に見積もりを取り、口コミも参考にしておきましょう。
ガルバリウム鋼板の使用実績やリフォーム実績がある業者が安心できますし、点検時に現状の問題点と対策をしっかりと教えてくれる業者を選定するようにしましょう。
まとめ
横葺きはデザイン性に優れてカラーも豊富であり、縦葺きよりも防音性に優れています。勾配が緩やかな屋根には使用できず、縦葺きよりもコストがかかるデメリットも含んでいます。
横葺き屋根に適した素材は断熱材ガルバリウム鋼板で、金属屋根の弱点ともいえる断熱性や防音性に効果を発揮します。ここで紹介した注意点なども参考にして、大切なリフォームで失敗しないようにしましょう。