瓦屋根は昔から広く日本で使われており、国内で一番の馴染みのある屋根材です。昔ながらの和風の住宅はもちろん、洋風の住宅にも使用される瓦屋根は海外でも使用されることの多い人気の屋根材となっています。
そこで今回はそんな人気の屋根材である瓦屋根を実際に施工する場合の流れや施工例など、知っておきたい瓦屋根について詳しく解説していきます。
瓦屋根の種類
瓦屋根にはさまざまな種類が存在するのですが、その中でも国内で良く使用されている『粘土瓦』『セメント瓦』『コンクリート瓦』の特徴などをご紹介します。
粘土瓦
粘土瓦は天然の粘土を原材料とした瓦です。日本瓦、和瓦、陶器瓦、いぶし瓦とも呼ばれている粘土瓦は、非常に耐久性があり塗装の必要がないメンテナンス要らずの瓦屋根です。
耐久性以外にも遮熱性、防水性、耐火性防音性共に高いことも特徴の1つです。
セメント瓦
セメント瓦はセメントと砂利、水を混ぜたものを瓦型に成形し塗装した瓦です。セメント瓦は初期費用が安く形や色のバリエーションが豊富なのが特徴です。ご自宅の雰囲気に合わせた形や色を選ぶことができるため、個性的な色合いが好みな人にも最適です。
しかし重さがあるため、住宅に負荷がかかりやすい面もあります。
コンクリート瓦
コンクリート瓦はセメントと水、骨材を混ぜ合わせ成形したのちに表面に塗装を施して仕上げられた瓦です。防音性、断熱性、耐火性など様々な機能に優れているコンクリート瓦ですが、塗膜が剥がれるとメンテナンスが必要になってきます。
屋根瓦の固定方法
屋根に取り付ける瓦は建築基準法やガイドライン法によって決められた施工方法に従って行われています。安全がしっかり考慮されている屋根瓦は固定方法もさまざまです。
ここからは3種類の固定方法をそれぞれ詳しく解説していきます。
土葺き固定
住宅の屋根に取り付けられた野地板に土をのせ、瓦を重ね合わせていくのが土葺きです。湿式工法である土葺きは耐震性に問題があるため、昨今では土葺きが用いられた屋根瓦は早期に改修するように呼びかけられています。土葺き固定はガイドライン工法ができる前に広く行われていた張り方です。
釘・ビスでの固定
瓦に小さな穴を開けて、釘やビスを使用して固定する方法です。この工法は瓦1枚ごとにすべての瓦を止めていく場合と、瓦2枚に対して1枚の瓦を止めていく場合があります。この2つの違いですが、ご自身がお住まいの地域が定めている基準風速によって異なっています。
釘やビスで固定する方法のメリットとデメリットとしては、安全面を高めるのに効果的な反面、瓦に穴を開けて固定するため瓦にひびが入る恐れがあるでしょう。
鉄線・銅線・ステンレス線での留め付け固定
鉄線、銅線、ステンレス線などを使用して瓦同士をつなぎ固定していく方法です。野地板などの下地を張った後に、桟木を使用する瓦の寸法に合わせて流し、瓦と桟木を鉄線、銅線、ステンレス線のいずれかを使用して固定していきます。
瓦の落下防止としては非常に効果的な方法ですが、使用する素材によって耐用年数が違いますので、劣化等の不具合が生じる前に定期的なメンテナンスをしておくことが大事です。
屋根瓦は定期的なメンテナンスが必須
日頃から雨風などの影響を最も受ける屋根瓦は、他の屋根材に比べると耐用年数は長く、安心して使用することのできる屋根材です。しかし地震や台風などの自然災害が起きた場合には、その都度メンテナンスが必要になってくるでしょう。
また瓦自体は耐用年数が50年以上ありますが、野地板や防水シート、桟木など使用している素材によって劣化速度が違います。各部分に使用されている材料の劣化状況を確認して定期的にメンテナンスを行うようにしましょう。
屋根瓦の施工の流れについて
ここまで瓦の種類や固定方法について解説してきました。ここからは実際に屋根瓦を施工する場合の流れを、各工程に分けてご紹介していきます。
足場工事
足場を組み立てず高所で作業することは、安全確保の面で義務違反に当たるため法律で禁止されています。作業員が安心安全に作業を行うためはもちろん、作業の効率アップを保つためにも、足場を組み立てることは大事な工程の1つです。
既存の屋根瓦の撤去
足場を組み立てたら屋根に上り、既存の瓦の撤去に取り掛かります。ガイドライン法ができる前の住宅ですと土葺き固定が多いため、瓦の下には多くの土が出てきます。多い時で1坪200kg以上の土が出てくる場合もあるほどです。
瓦や土と同時に引っ掛けるのに使用されている桟木も一緒に取り外していきます。取り除かれた土や瓦などは専門の廃棄処分場に持っていき業者側で廃棄します。
下地
下地とは瓦を葺く土台となる面のことを指しており、垂木の上に野地板を隙間なく打ち付けていくことで下地が出来上がります。この下地は瓦や土などの重さに長期間耐えてきたため、痛みや劣化が起きている場合が多く見られがちです。
劣化がある場合は、下地を張り変えていく作業が追加されていきます。
下葺き(防水シートなど)
下地を綺麗に張り替えたら防水性、断熱性に優れた下地材(防水シートなど)を敷いていきます。下地材にはさまざまな種類があるのですが、一般的に広く使われているのはアスファルトルーフィングと呼ばれる防水紙です。こちらは耐用年数が10年ほどとあまり高くなく、定期的に交換する必要があります。
下葺き素材の特徴
下葺き素材にはそれぞれ特徴があるのでみていきましょう。
・アスファルトルーフィング
アスファルトフェルトにアスファルトを両面塗布しておき、しみ込ませていきます。耐用年数はそれほどでもありませんが、新築でも多用されています。
・改質ゴムアスファルトルーフィング
気温によって状態変化が起きやすいアスファルトルーフィングを改良し、ゴムや合成樹脂などを加えて耐用性を向上しています。
・粘着層ルーフィング
片面が粘着シールになっている素材で、カッターや釘を使わずに設置できます。カッターや釘は劣化する恐れがあり、ここから雨漏りにもつながりますので、密着しやすい粘着層ルーフィングは安心できる素材といえます。
・透湿防水紙ルーフィング
室内に籠りやすい水蒸気などの湿気を屋外へ放出します。湿気は住宅にとって天敵ともいえるものですので、通気性にも優れています。
・高分子系ルーフィング
軽量でポリエチレンなどの合成樹脂を主成分にした素材です。屋根に使用するので軽量は大きなポイントとなり、耐用性も高めています。
地割・桟木の取付け
葺き上りが隙間なくきっちりと納まるように、屋根面の寸法を割り出していきます。この作業は地割と呼ばれ、少しずつ敷いていく瓦のサイズから重なる部分の寸法を基準として計算していきます。
地割で出された寸法に基づき、下地材(防水シートなど)の上に瓦を引っかける桟木を釘打ちし固定していきます。桟木が取れると瓦の落下などにつながる恐れがありますので、腐ったり割れたりしない良質な木材で作られた桟木を使用します。また木材以外にもプラスチックやアルミ製の桟木が使用されることもあります。
瓦の取り付け
桟木のうえに瓦を敷いていく作業には、屋根の右側から敷いてある瓦の下へ順に差し込んでいく『差し葺き』と、屋根の左側から瓦の上に順にかぶせていく『かぶせ葺き』があります。葺き終わったら必要箇所に釘留めを施していきます。
実際の施工例
ここまで瓦の特徴から実際に瓦屋根に施工する場合の手順について解説してきましたが、ここからは実際に施工された住宅の施工例を2軒ご紹介していきます。
和瓦から防災瓦へ
一般的に和瓦は長い年月とともに下地が劣化し、雨漏りに悩まされているため、新しい瓦への葺き替えを実施しています。下地には杉皮が張られており、杉皮は残したまま瓦の葺き替えを行います。
また、防水性や耐風性を高めるために、既存の和瓦から防災瓦に葺き替え、棟部には耐震対策として棟補強金具で補強することで、地震対策にも繋がる瓦屋根が完成します。
セメント瓦から軽い瓦へ
築50年以上が経つ住宅では、重いセメント瓦を軽量の瓦に葺き替えを実施することがあります。セメント瓦を外してみると、長年の劣化により下地が割れていることや、腐っている部分が見つかると、その野地板も補強しなければなりません。
トステムのTルーフは特徴としては瓦調のデザインで、重厚感がありながらも軽量なために住宅への負荷が少なく、耐震性も向上した屋根瓦へと変貌します。
費用は瓦1枚単位
気になるメンテナンス費用ですが、工務店やリフォームを受け持つ店舗によって異なるものの、おおよそ一枚当たり1万円前後といった費用が発生します。また、現在使用している瓦をそのまま使用する場合だと値段も代わり、1平方メートル当たりで見積もりを出す場合もあるでしょう。
耐用性が高くて軽量のタイプになるほど費用も上がっていきます。
まとめ
今回は瓦屋根の施工に関する情報を施工例も交えてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
屋根瓦は住宅の中でも1番雨風に晒される場所であり、住宅を守ってくれる大切な箇所です。普段見えない場所であるからこそ、瓦の固定状況を確認してもらったり、雨漏りなどの劣化症状が起こる前に下地の交換が必要です。定期的なメンテナンスとともに耐用年数が経過した場合には、瓦の葺き替えも実施するようにしましょう。
現在屋根瓦にお住まいの方はもちろん、これから新築住宅を建てる予定があり屋根材を瓦にしたいと考えている人は、この記事を少しでも参考にしていただき瓦屋根の導入を検討していただけたらと幸いです。